鷹の道

大学院に通っています。中国政治・外交を勉強中。野球を見ます。ソフトバンクホークスを応援することかれこれ15年。

さいはての中国

最近読んだ本の中で面白かったのがこれ。

 

さいはての中国 (小学館新書)

さいはての中国 (小学館新書)

 

 

安田峰俊は非常に鋭く面白い文章を書く中国ルポライター。自分も彼くらいウィットに富んだ文章が書けたら、と常々思わされる。

目下安田峰俊の代表作と言えば今春刊行され、先日城山三郎賞を受賞した『八九六四』だろう。

 

八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

八九六四 「天安門事件」は再び起きるか

 

 

政治的にセンシティブな話題を扱っていながら政治的な色を感じさせない、良い意味で「醒めた」叙述になっている。中国、特に政治的イシューを扱う人は知ってか知らでかある立場に肩入れしてしまうことが多い。彼の叙述は中立というか、俯瞰的な印象がある。現場に足を運んで地道な取材活動をされているにも関わらず、対象との距離の取り方が見事なのだ。

 

さて、そんな著者の最新刊『さいはての中国』は中国の様々な「さいはて」を訪ねたルポ。各種雑誌に掲載された文章を集めたものということもあり、「さいはて」を訪ねているということ以外、各章は問題の扱い方や著者の熱量の統一感に欠けている。しかしそれがむしろ「さいはて」探訪の追体験に一役買っている。

習近平肝いりの雄安新区や内モンゴルの鬼城などの章からは必ずしも順風満帆とは言えない開発の現場が見て取れ、一方でカンボジアでは中国が「ド派手な」支援でプレゼンスを高めている現状も淡々と描かれている。

中国はその国境の内部に留まらず世界各地に「さいはて」を抱えている。一方で国境内部には多様な社会階層や民族を抱えており、その「さいはて」は深い。どこまで自分で足を踏み入れられるかはさておき、中国の動的な広さと深さは中国を理解する上で念頭に置くべきであろう。

 

 

前述の通り著者の筆致は非常に醒めているが、それゆえに中国のこれからを見通す上で示唆的な点が多い。中国を知りたいという全ての人に勧めたい作家である。