鷹の道

大学院に通っています。中国政治・外交を勉強中。野球を見ます。ソフトバンクホークスを応援することかれこれ15年。

In Order to Live

更新が全然継続できません。当初はバンバン書いてバンバン更新するつもりでしたが、書けない自分に苛立つばかりなのでスタンスを変えることにしました。気が向いたら書きます。気が向かなければしばらくほったらかしです。これくらいの緩さの方が細く長く続けられるような気がします。続かなければフェードアウトするまでです。

 

今日は読んだ本について。

 

In Order To Live: A North Korean Girl's Journey to Freedom

In Order To Live: A North Korean Girl's Journey to Freedom

 

 恥ずかしながら英語が得意ではなく、少しコンプレックスにもなっています。これまで微妙に英語を避けて勉強してきたのですが、いい加減ちゃんと英語もやらないと、ということで手に取りました。アジア人が書いた英語なら無理なく読めるのではなかろうか、という適当な読みです。

書き手がアジア人だからなのかはわかりませんが、実際読みやすかったです。英語も読みやすかったし、何より内容に引き込まれました。

 

中身は北朝鮮編、中国編、韓国編の3パートに分かれています。北朝鮮編の叙述は本当に生々しいです。キム一族レジームの中で北朝鮮の一般庶民がいかに窮乏していたのか、思想教育がいかに徹底されていたのかが描かれています。中国編では脱北後の過酷なサバイバルの様子、韓国編では自由をつかみ取るプロセスが描かれており、それぞれ引き込まれるのですが、やはり北朝鮮編の内容の衝撃が最も大きかったです。描かれているのが未知の世界だからでしょう。

 

貧しい生活、横行する賄賂、反体制的言動への厳しい取り締まりなど驚かされることが多かったのですが、中でも個人的に最も驚かされたのは、キム一家体制への忠誠心の強さです。

中国も言論統制が厳しさを増しており、表立っての習近平共産党批判はご法度。一部では「習近平礼賛」現象が起こっていることも伝えられています。それでもネットなどでは統制の網の目をかいくぐって体制を揶揄・非難する発言も見られます(もっともすぐに規制されますが)。それだけ国民を政治体制に従順にさせるのは簡単ではないのでしょう。特に今の時代、情報の流れをどれだけ統制しても外からの情報を完全に遮断するのは容易ではないので、プロパガンダによる思想統制も難しいと言えます。

そんな中、北朝鮮の人権概念をガン無視した社会統制は国民の「洗脳」に概ね成功していることが文章から伝わってきます。情報統制、言論統制の厳しさは中国の比ではありません。こうした洗脳は中国に渡っても解けないし、韓国に渡って西側諸国の価値観に触れてもなお、北朝鮮で培われた価値観との葛藤に苦しむ様子が描かれています。

 

僕らが日ごろ報道で接する北朝鮮はもっぱら金正恩であり、核・ミサイル開発です。その独裁体制の裏で一般庶民は厳しい生活を強いられているというのも、よく語られるところです。一方で、こうした庶民の厳しさを伝え聞いたとき、僕らはしばしば「指導者ばかり勝手なことをして、苦しんでいる庶民は怒っているに違いない」と考えます。もちろんそういう庶民もいるはずです。最近は特にそういう声が上がっているらしいです。しかしながらパク・ヨンミの記述は国家による刷り込みの苛烈さをありありと語っています。現体制が続く限り、北朝鮮が「内側から」変わることは見込めなさそうです。暴力を用いた恐怖政治ももちろん恐ろしいですが、価値観の刷り込みによる服従の恐ろしさを感じさせられました。

 

文章の最後の方でも言及されていますが、この本の出版や世界中での言論活動によって彼女が北朝鮮政府に危害を加えられることがないか、心配になってしまいます。金正男のようなことにはくれぐれもならないように気を付けつつ、これからもご自身の経験を語ってもらいたいと思います。