鷹の道

大学に通っています。中国政治・外交を勉強中。野球を見ます。ソフトバンクホークスを応援することかれこれ14年。

中国政治からみた日中関係

ブログ新設から1年弱、とんと続きません。書く時間がない、書くネタがない、というのは言い訳に過ぎません。卒業論文が仕上がった今、改めて書くことと向き合おうと思います。まぁしばらく論文を書いてはいたのですが。

 

基本は読んだ本について書くことにします。

中国政治からみた日中関係 (岩波現代全書)

中国政治からみた日中関係 (岩波現代全書)

 

 

日中関係を論じたものは数多い中、日中関係の変動要因を中国国内に求めるものは少ないのが現状。著者もそうした問題意識に立って、中国政治、とりわけ上層の権力闘争という点から日中関係を議論しています。

著者は1970年代以降の日中関係を「一九七二年体制」「戦略的互恵関係」という枠組みを用いて分析。

「一九七二年体制」とは国交正常化以来の日中の友好関係のことで、①冷戦体制下でのソ連を仮想敵とした日米中の連携、②経済面(中国近代化支援・相互依存)での共通の合意、③戦争記憶の共有、④台湾問題をめぐる合意、の4点を基礎とします。(154頁)

「一九七二年体制」は教科書問題や光華寮事件の発生にも関わらず1980年代いっぱい続きます。しかし、①冷戦の終焉、②「中国脅威論」の浮上、③戦争世代の世代交代、④天安門事件、台湾民主化による日本世論の変化によって「体制」は不安定化。日中が新たな枠組みを見つけられないまま「体制」の不安定化が進んだ1990年代、歴史問題を中心に日中関係は悪化。2006年に安倍・胡錦涛間で結ばれた「戦略的互恵関係」は未来志向という点で「体制」に代わる枠組みとなり得たものの、日中関係の改善は道半ばといったところです。

 

「体制」の枠組みの中で、どうして1980年代は日中友好を維持できたのか。どうして1990年代以降日中関係は悪化したのか。どうして「戦略的互恵関係」は機能しなかったのか。こうした問いに対して著者は天安門事件までは胡耀邦など政治改革派と保守派の権力闘争、天安門事件後、特に江沢民から胡錦涛への禅譲前後は江沢民上海閥胡錦涛ら青共団派、習近平太子党派の権力闘争によって説明しています。

 

中国の政治過程は一昔前と比べると多元化が進んでいるとは言え、やはり最高指導者の影響力の大きさを感じさせられます。そこを目指した権力闘争が展開されるので、中国政治を見る上で権力闘争の観察は不可欠なのでしょう。しかし中国政治の複雑さは権力闘争だけで語り尽くせるものではないと考えます。官僚機構も関与する政策形成や、近年注目されるネット世論の存在は権力闘争とは別の枠組みで考えるべきでしょう。「中国政治」の議論が指導者層の権力闘争に終始してしまっているのは少し不満であると言わざるを得ません。

 

しかし非常に読みやすく、ここ4,50年の日中関係を概観するのに非常に優れた一冊であると思います。折に触れて読み返すことになりそうです。